前回の記事では知られざる土地先行物件の購入の流れ、融資に関して説明していきました。
当然ですが購入を決断するまでにはかなり綿密なシュミレーションを行いました。
今回の記事ではその中身や細かいチェックポイントなんかに関して紹介していこうと思います。
一般的に言われているシュミレーションでは不十分
よく書籍なんかには運営にかかる諸経費を○○%で見込んで計算、といった記載ありますが、これでは完全に不十分です!
例えば、賃貸管理会社への管理料や、固都税、空室率の計算等では%では基本的に物件価格や賃料に対しての料率で大まかに計算出来ます。
ただ計算するうえで注意しなければいけないのは、設備更新費用、清掃費用、現状回復費用等です。
これらの費用は物件やエリアによって絶対額が大きく変動しない費用です。例えば原状回復やリフォームの業者の料金って東京と地方でそんなに大きく差があるでしょうか?
東京の方が2~3割くらい高い事はあっても倍になったりはしません。それに対して東京と地方では例えば同じ条件の間取り広さの物件でも平気で倍以上変わったりします。
つまり賃料に対する経費率が場所によって大きく変わる事になります。基本的には、、、
東京は賃料が高いので、賃料に対する経費率が低いです。地方や郊外は賃料に対する経費率が高いです。
具体的には。。。
- 東京都内で家賃8万円の20㎡ (1K)の物件
4年居住して退去した場合の原状回復費用を16万円とします
→年間収入は96万円に対し年間で割り出した原状回復費用は4万円です。
→年間の1部屋当たりの経費率は4.2% - 地方、郊外で家賃5万円の25㎡ (1K)の物件
郊外なので少し広い前提にしますが、家賃はこのくらいのエリアは山ほどあります。4年居住して退去した場合の原状回復費用を地方である事を前提に少し割安にして同じ様に16万円とします
→年間収入は60万円に対し年間で割り出した原状回復費用は4万円です。
→年間の1部屋当たりの経費率は6.7%
これだけ経費率が変わってきます。よって、どの物件も一律の%で計算するのではなく、しっかり物件のエリア、賃料、間取り、築年数等に合わせてしっかりと計算する必要があります。
またAD(賃貸の募集を行う際に不動産屋に支払う成約料)やフリーレントの有無等もエリアや間取り、築年数によって変わってきますので、一律の%で計算しては正確なシュミレーションが出来ません。
またしても登場しますが、この考え方は下記の書籍に基づくものですが正にその通りに計算すべしだな~と思っています。
実際の収支に使う経費率の計算方法
上記書籍の考えに基づいて実際の経費率をそれぞれ計算してみます。ちなみに私は書籍の条件より少し厳しめに料率を見積もっていますので、皆さんも自分の物件に合わせてアレンジしてみてください。
- 客付け費用率
(ヶ月) | 都心築浅 | 都心築古 | 都心郊外築浅 | 都心郊外築古 |
稼働期間 | 36 | 36 | 36 | 36 |
礼金 | 1 | 1 | 0 | 0 |
更新料 | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.5 |
フリーレント | -1 | -1 | -1 | -2 |
AD | -2 | -2 | -1 | -1 |
費用率 | -4.2% | -5.8% | -4.2% | -6.9% |
例えば都心築浅の単身用であれば大体3~4年に1回は退去があるとして、退去までに期間を36カ月(3年)にしています。
それに対して礼金は1か月分で設定(エリアによってはゼロ)、更新料は管理不動産屋との折半前提(不動産屋次第)、フリーレントを1か月分付与、ADは2か月分付与の前提です。この部分は新築かどうかやエリア、間取り、物件の供給数、等によっても変わってくるのでエリアの不動産屋のヒアリング等で正しい数字を入力頂ければと思います。
フリーレントを1か月、ADを2か月は正直かなり保守的に見ているので、実際は新築ならAD1~2か月だけでも決まる可能性も十分あると思います。(少なくとも相当供給量が多いとか狭小物件でなければフリーレントは必要ないかもしれません)
- 運用経費(1部屋/1年あたりの経費)
(万円/年) | 築10年以内 | 築10~20年 | 築20~40年 |
エアコン交換 | 1 | 1 | 1 |
火災・自身保険 | 1 | 1 | 1 |
共用部電気・水道 | 0.4 | 0.4 | 0.4 |
清掃費 | 1.2 | 1.2 | 1.2 |
退去時原状回復 | 2.7 | 2.7 | 2.7 |
消防設備 | 0.4 | 0.4 | 0.4 |
修繕費 | 1 | 6 | 9 |
合計 | 7.67万円 | 12.7万円 | 15.7万円 |
このように経費率は1部屋単位まで細分化して計算しましょう。あくまで一般論ですが、各項目の解説をします。
エアコン交換:8年ごとに8万円の新規設備に交換前提(1万/年)
火災・地震保険:5年契約で1戸当たり5~6万円(1~1.2万/年)
共用電気・水道代 :1戸当たり300円/年の前提
清掃費 :月2回で1戸当たり1000円/月前提 (1.2万/年)
退去時原状回復 : リフォーム代と清掃費は計16万円(半額大家負担) 稼働36か月(3年)前提
消防設備 : 0.4万円/年(点検・メンテナンス込み)
修繕費:
~10年:排水管高圧洗浄/10年目換気扇交換/その他修繕で1万/年
~20年:上記+屋根/外壁/階段塗装/+給湯器交換+ウォシュレット+インターホン 6万/年
~40年:色々壊れる 9万/年
※100坪(330平米程度で外壁/屋根の修繕/階段補修行うとざっくり300万円程度
上記の様に特に築年数によって修繕費の見積り金額は変わるので経費率が大分変動します。
上記の費用を家賃総額から計算して経費率を計算します。
例えば新築の家賃8万/部屋×8部屋であれば年間家賃は768万円ですので、経費率は7.67万÷768万 = 約10%ですね。
ここに先ほど計算した客付け費用率、不動産管理費、固都税の計算を加えて全体の経費率を算出し、実質利回りまで計算するイメージです。
実際の収支計算の中身
私の場合は新築~2年目、築3年~4年、築5~6年という形で各経費の推移、家賃の下落率を考慮して実質利回りを計算しています。
上記の実質利回りを実際の満室時の賃料に掛けていき、そこから空室率を考慮し、更に銀行への返済と金利の差し引き、純キャッシュフローを計算します。
以下はその計算用のシートです。ある不動産投資に関する書籍の付録で付いて来たエクセルを自分流にアレンジしてます。
こんなに細かくシュミレーションしなくてもいいかもしれませんが、もし欲しい方はご連絡ください。
こうして年単位のキャッシュフローの詳細をパターンを変えて計算してみます、強気パターン、想定通りパターン、最悪パターンくらいの3パターンくらい作っておくといいかもしれませんね。(シートを変えて数字を一部変えるだけなのでそんなに面倒ではありません)
強気パターンは強気な家賃設定で満室になる場合や空室率を5%程度で見込んでみる場合等になります。
最悪パターンは想定家賃をかなり低めに且つ空室率を15%~20%くらいで計算してみると良いかと思います。
最悪パターンでシュミレーションしてみて破綻しないようであれば本格的に購入検討してみるといいのではないでしょうか。破綻の定義は個人の属性によって変わるので何とも言えませんが私の場合はキャッシュフローがマイナスにならない事を1つの基準にしています。
さらにここまで計算してみて、最後に出口戦略もシュミレーションします。
結局出口戦略も含めてシュミレーションして最後に十分な利回り(利益)を確保していればいいわけですから、最終的に売却した場合の想定、持ち続けた場合の想定をしっかり考えておく事が重要です。
売却の場合は利回り何%くらいで売れそうなのか?それまでのキャッシュフローと売却益、更に税金等も考慮してどのくらいの利益になるのか?抜けがちな売却時の諸費用も含めます。
いつ売るのが一番利益が大きくなるのか?税金の計算は個人で持って売る場合と法人化して売る場合で税率も変わってきますし、毎年の賃貸収入も変わってきます。
個人であれば経費化する範囲はかなり限定されますが、法人化すればかなり幅が広がり毎年の利益をなるべく圧縮して節税する方法もあります。
但し将来的な融資の事を考えると単純に利益を赤字やゼロにすればいいというわけでもありません。
ご自身の状況や将来の規模感、キャッシュフローの目標額に合わせてしっかりとシュミレーションすることが必要です。
出口戦略も家賃収入のキャッシュフローの計算と同じ様に強気パターン、想定通りパターン、最悪パターン等で計算してみると良いですね。
極論を言えばキャッシュフローの最悪パターン×出口戦略の最悪パターンの組み合わせで赤字になっていなければ成功とは言えませんが破綻することもありません。
ただ勿論最悪パターンすら超えてきてしまう場合は自身の見積りが甘すぎた、という事になってしまいますが、、、
この組み合わせでの利益の額を様々な施策で最大化するのが不動産投資を行う目的であり、非常に面白いところだと感じています。
私も偉そうな事が言える程の経験値があるわけでは無いのですが、この点はしっかり意識して今後も不動産事業を行っていくつもりです。
次回以降の記事では建築着工までの流れや土地のボリュームチェック等に関しても触れて行こうと思います。
~紹介したお勧め書籍∼