もす少し時間も経ってしまい記憶から薄れつつある事件ですが、覚えておりますでしょうか?
不動産投資を行う上で必ず知っておいた方が良い事件かと思います。全容がしっかり把握できるお勧めの書籍ですので是非読んでみてください。
個人的にこの事件には色々な闇が潜んでいた様に思えます。この事件が一つのきっかけで悪徳不動産業者の浄化が多少なりとも進んだのが事実ですが、一方で億単位のお金を良く下調べもせずに投じてしまう人たちの心理、、、(しかもエリートな属性の方が多いです)
さらには詐欺商法に加担したスルガ銀行、、、
勿論一番悪いのはか弱いサラリーマンからヒルの様に生き血(資産)を吸い切ってやろうと、暗躍していた不動産業者(スマートデイズ)とスルガ銀行ですし、被害者となった投資家の皆さんは気の毒としか言えないのは事実です。ただ被害者も全く責任が無いとは到底思えません。
あくまで被害者目線で描かれている書籍ですので、その辺のニュアンスは薄まっていますが不動産投資を少しでも真面目に取り組む方から見れば、被害者にも落ち度があったと言わざる得ないかと思います。
悪に正義の鉄槌を下す奇麗なストーリーにはなっていますが、被害者側の闇の部分もしっかりと考察しながら読まれると更にご自身の投資目利き力アップにも繋がるんじゃないかと思います。
被害内容の実態
基本的なストーリー構成は各被害者が被害に遭うまでの流れやその後の実情がリアルに描かれています。書籍内に具体的に登場する被害者の金型はそれなりに属性の高いサラリーマン、医師、パイロット、大学教授 等です。
ただやはり皆さん、仕事や家族の将来の事を考え何とか収入を拡大させたい、という思いから不動産投資としてシェアハウスカボチャの馬車への投資を決断されています。
不動産会社から投資を持ち掛けられるシーンなんか見てもどう見ても怪しい、、、と思える話ですし、実際に皆さん最初は疑いの目を向けながら話を聞いている様子がうかがえます。
ただ何だかんだで怪しい側面には目を瞑り、奇麗に見えるストーリーのみを受け入れてしまってるんですね。。。
何と被害者の殆どの方々が1~2億以上の投資を行うにも関わらず不動産会社からの話のみを鵜呑みにして、現地調査すら全くせずに投資に踏み切っています。
また融資を受ける金利の相場や物件の相場などもほぼ調査せずに人生を左右する金額の投資を決めてしまっているのですから、人間の心理というのは不思議なものです。
例えば物件自体は5000万の価値しかない様な土地を1億くらいで買わされ、若年女性への雇用支援といった社会的貢献をちらつかされながら、実際は独房の様な10㎡にも満たない狭小物件をシェアハウスという耳障りのいい言葉でカモフラージュされています。
また不動産賃貸業において最大の不安要素である入居者募集に関しても、サブリースという悪魔の囁きによって見事に打ち消されてしまってます。
不動産賃貸においてサブリースで無いと入居が埋まらない様な部屋など買ってはいけません。逆を言うとちゃんとした物件ならサブリース等使う理由が無いのです。
更にスルガ銀行からも融資の金利を4~4.5%で受けていたり、1000万への追加ローン(フリースタイルローン)を7%の金利で組まされる、など
ちょっと調べたりしたらオカシイと思えるような条件であっても皆さん思考停止状態で話を進めていくのです。
確かにそんな詐欺物件を販売する不動産会社、額面通りの価値の無い物件を担保に通帳など改ざんを行って不正融資を行うスルガ銀行が諸悪の根源であることは間違いないです。
ただこれだけの金額を投資するにも関わらずその正当性を確認する事も無く、殆ど何も自分で調査しない、というのは正直その当人にも問題があると言わざる得ないのでははないのかなぁ、、、と思うのも正直なところです。
被害総数は700∼800人にも上ったようで大体皆さん1~2億くらいの融資を組まされています。
ちょっと書籍上で登場する物件の利回りや冷静に計算してみます。
立地:西武新宿線鷺ノ宮駅 徒歩4分
物件価格:土地1.2億、建物6,750万円=1.875億円
金利:4.5%
毎月の返済額:96万円(書籍上の記載)
毎月のサブリース支払額(予定):125万円
上記の物件価格=借入額と考えると毎月の銀行への支払額は金利も含めると110万円くらいになるはずなんですが、、、何故か96万円となっていますね。
ちょっとその理由は不明ですが、通常サブリースは総賃料の80∼90%程度が相場ですので、ここでは85%と仮定します。
毎月のサブリース支払額が125万円ですので本来の家賃は150万円/月(1,800万円/年)程度であると考えられますね。
そう考えると物件利回りは何と約10%になります。この数字だけ見ると非常に良い物件に見えるのですが、実際には10㎡に満たない部屋に対して6.5~7万円程度の家賃が設定されていた前提での数字の様です。
書籍内では上記の家賃を3万円後半程度に設定したらようやく部屋が埋まり始めた、という記載がありますので、元々の想定賃料の55∼60%程度の家賃が相場だった、という様にも取れます。
そうなると利回りは5%台∼6%程度と、立地を考えれば一般的な水準に落ち着くわけですから、サブリースを解除して、自分でしっかり入居者を探して、金利を1%台∼2%程度で設定出来ればもしかするとギリギリ運営できるかもしれませんね。
ただシェアハウスという業態は通常の不動産検索サイトでは掲載に条件が付く事もある(例えばリビングがある事等)みたいですので、いずれにしてもリスキーな物件には違いありませんので、決して素人が利回り6%程度で手を出してはいけない代物です。
※カボチャの馬車のシェアハウスはリビングは無い物件が殆どだったようです。
そんなクソ物件をエリート層の方々に800棟以上売ったわけですから、信じられないような話です、、
最終的な顛末
本タイトルにもある様に最終的にはスルガ銀行を相手取った敏腕弁護士(河合弁護士)の活躍や被害者の方々の執念により見事総額440億の代物弁済というこの上ない成果を勝ち取ります。
要は物件と引換に銀行からの借金をチャラにしましょう、という合意です。
弁済能力無い不動産屋をターゲットにするのではなく難攻不落と思われたスルガ銀行を相手取り、戦い続けた被害者、弁護士団の努力と執念が生んだ成果ですが、その辺の中身が非常に詳細に且つ具体的に描かれていますので、小説の様な興奮感を持ちながら読み進める事が出来ます。
実際には家族の崩壊、本業への支障、自己破産者、自殺者など、、、多くの犠牲を払ってでの結果ですので、決して大円満というわけではありません。
しかし個人向けの詐欺事件から最終的に上場地方銀行から勝ちに等しい弁済を勝ち取った事例として今後も語り草となっていく事は間違いないかと思われます。
また不動産業界の浄化作用も少なからず影響あったと思われます。この事件後は大分銀行融資の審査が厳格化したようですし、、、(いやそれが本来の銀行の機能の1つなんですけどね)
書籍内に記載ある通り個人向け詐欺は(全体から見ると)少額で、立件までに非常に手間と時間がかかるので警察も中々動いてくれない、という事情があり、泣き寝入りさせられる事も少なく無いようです。
実際私も学生時代に未公開株投資に引っかかり、泣き寝入りした事があります、、、笑
↓記事で書いています。興味ある方は是非。
という事でちょっと個人的思想も結構書いてしまいましたが、カボチャの馬車事件の背景・詳細が非常によく分かるお勧め書籍の紹介でした。
不動産投資をこれから始める方ももう始めている方も読んだ事無い方は是非とも!