前回記事で初心者のサラリーマン投資家がいかに理想的な条件の物件と見つけ、購入まで完遂させる事が難しいのか、の実例をご紹介しました。
こうして苦境に陥った私ですが、
いやー、、、、、参ったね、、、このまま物件探し続けてて本当に購入できる日が来るのかねー、、、一生堂々巡りなのでは?
まぁこんな感じの不安を悶々と持ち始めていたわけです。
それでも、諦めの悪さくらいしか取り柄の無い私ですので、とりあえず継続して同じ様なサイクルを繰り返していました。
そんなある日、ふと見慣れない不動産屋からのメルマガが目に留まりました。
おや、、、、これはかなり条件のいい物件に見えるな。。。
それが初めての「土地先行物件」との出会いでした。
土地先行物件とは?
これは要はまず土地を購入(決済)してから、その土地に収益物件を建てる、という方法です。要は注文住宅みたいなものです。
ただ不動産屋から紹介される時点で建てる上物のプランニングも含まれているケースが多くなります。
例えば150㎡の土地に180㎡の延床面積(居住面積)で1K(20㎡程度)の間取りが9部屋の木造アパートを建てる様なプランが事前に組まれている、という感じです。
なのでその不動産屋が既に土地のボリュームチェックを完了させて、建てられるプランを見繕ってくれており、且つ建築会社の選定も含まれている事が多いのであくまで流れが土地を先に購入してから、新築物件を建てる、というだけです。
土地のボリュームチェックとは?
その土地にどのくらいのサイズの建物が建てられるかを確認することです。土地はその形状や用途地域、エリア等で建蔽率や容積率、高さ制限等が決まっており、また前面道路の幅や接道によっても建てられるサイズが小さくなってしまったりします。
例えば200㎡のサイズの土地があっても容積率が100%であれば、最大でも延床面積200㎡までの建物しかありませんが、容積率が150%であれば300㎡までの建物が建ちます。
収益物件において、この差は非常に大きく、限られた土地に可能な限り居室を設けて利益を最大化するには、土地のデッドスペースを無くしなるべく高く建物を建てた方が良いわけです(あくまで理屈上の話ですが)。
ボリュームチェックに関しては非常に細かい条件が色々あるので正式な見方は建築士の方にお願いするべきですが、簡易的なチェックは勉強すると出来る様になります。
いずれにしても複雑なのでまた別記事で簡単に紹介してみようと思います。
ただ土地先行物件には幾つかデメリットとなり得るリスクが存在します。
・建築完成時期が予定通りにいかない場合がある
・追加のコストが発生する場合がある
・予定通りの間取りが確保出来ない場合がある
・最初に土地の決済をしてから完成までに1年程度要する場合もあるのでその間の金利負担やその他出費に耐えられるだけの自己資金を用意する必要ある
・(最悪の場合)建築会社が倒産して、工事が滞る可能性がある
ざっというとこんなところでしょうか。
ただ一方で通常の物件を購入する以上のメリットもあります。
・利回りを高く確保しやすい(通常の1%くらいは利回りが上がる事が多い)
・新築での購入になるので、数年持った後の売却の出口戦略が立てやすい
・ある程度の利回りを確保しつつ、立地が良い物件が入手出来る(可能性が上がる)
・利回りが高く収益性が確保し易いので良い条件で融資を受けられる事が多い
・土地取得∼建築∼客付けまでの不動産事業のほぼゼロから経験出来るので、将来的な物件の目利き力が大きく上がる
・あまり玄人投資家や業者が積極的に購入してこないので多少ゆっくり検討出来る
まぁ正直利回りが高く確保出来る、という点が最大のメリットであり、そこの魅力が弱い土地先行物件であればリスクを背負って選ぶ理由はありません。
なぜ私が土地先行物件に興味を持ち始めたのか、と言いますと、既存で見つけられる物件に購入したい条件を満たす物件が非常に少なかったから、という点に尽きます。
これは平たく言うと、ある程度の立地(東京で駅から徒歩10分程度)に最低限の間取り(1Kで20㎡以上)、最低限の利回り(6.5~7%程度)を満たす物件というのが殆ど存在しない、という事です。
この条件が土地先行物件であれば満たせる可能性がある、と一縷の望みを見出したのです。
上記に書き出したリスクに関してもう少し詳しく解説してみます。
建築完成時期が予定通りにいかない場合がある
土地先行物件の場合、まだ地盤チェックですとか、地中埋没物等の確認が出来ていない、また隣地との境界線や地中のインフラ(水道管、ガス)等の情報があくまで過去の書面ベースでしか確認出来ていないケースが多いです。
よって実際に工事を進める中で、例えば地盤が緩いので杭を打ち込む追加工事を行う必要があるとか、埋没物の処理が必要になるとか、建築確認の取得に想定以上に時間がかかる、等 想定外の出来事が発生することがあり、完成時期が遅れる事があります。
こればっかりがコントロールできないので、高利回りのリスクとして受け入れるしかありません。
追加コストが発生する場合がある
こちらも上記の要因で元々見積りに含まれていなかった様な項目(追加地盤工事、地中埋没物、インフラの追加引込工事が必要等)が発生する可能性がゼロではありません。
追加工事が発生してしまった場合、どこまでのコストを誰が負担するのか、という点は契約前にある程度握っておくべきです。
私の場合は埋没物が実際に出たのですが、そのコストも売主負担で済ませられました。
また元々のプランに入っていなかったが、後で必要と判明した設備(例えば最近だと宅配ボックスの有無、防犯カメラや駐輪場の設置等)を入れる場合等も追加コストとなるので要注意ですね。
土地先行物件の大きなリスクとして完成した上物をその目で確認出来ないので、特に初心者サラリーマン投資家は何が必要なのが、明確に判断し辛い点があります。
予定通りの間取りが確保出来ない場合がある
例えば事前のボリュームチェックでは160㎡(20㎡×8部屋)がギリギリ入ると判断されていたとしても、実地で測量したら想定より少し土地が小さく、想定のボリュームが入らない、というケース実はチェックが甘く、高さ制限に該当していて3階建ての建物の一部の面積を削る必要出てくる、、
等々、実際の土地の測量や前面道路幅、北側向き等の容積率に関係してくる要因が実際に少し違っており想定通りの間取りプランが入らない場合等もあり得ます。
特に想定プランの消化容積率がMaxギリギリの場合は注意が必要です。事前にプランを組んでいる不動産屋にどのくらい容積率に余裕があるのか、確認しておく必要があります。
土地決済からの金利負担やその他諸費用が発生する
土地先行物件では先に土地を購入してから上物を建築するのでそのタイムラグが半年∼1年くらいあります。
当然土地も融資を受けて購入するのですが、上物が建って実際に家賃が入り始めるまでは一切実入りがありません。
銀行もその辺の事情は考慮して元金の返済は賃料が入り始めるまで待ってくれるのですが、金利だけは支払いをしなければいけません。
また、土地や建物の登記の為の費用、司法書士報酬、不動産取得税、(所得時期によって)土地の固都税の支払い、などなど、先行して出ていく費用が結構あります。
なので最初はとにかくお金が出ていくだけで、何も収入が無いので、しっかりといつどんな費用が発生するのか確認、計画を立てて資金繰りを行う必要があります。
このタイミングでこの費用かかるのか~、というものも結構あるので、事前に可能な限り不動産屋との下打ち合わせを行う必要があります。
建築会社が倒産して、工事が滞る可能性がある
これが最悪のパターンです。建築会社が倒産すると、当然工事がストップしますし、引き継いでくれる会社を探す事になりますが、建築不良が発生した際の責任の所在がはっきりしなくなるので、どの建築会社も引き継ぐを嫌がるか、かなりの追加コストを払って引き受けてもらう事になります。
土地先行物件の場合、融資をしてくれる銀行は基本的に土地代金、建築代金の総額の90%、と言った金額を融資します。
よって建築会社の倒産もリスクの1つとして融資判断を行いますので、まともな銀行であれば倒産懸念のある建築会社が手掛ける物件に融資を出すわけがありませんので、ある程度は安心なのですが、倒産可能性はゼロではありません。
リスクヘッジは簡単ではありませんが、完成保証の保険を付与するとか、建築会社の財務状況を購入して確認しておくとか(1,000~2,000円くらいで帝国データバンクの財務データ買えます)、になるかと思います。
ただ保険は費用が掛かりますし、必ず使えるわけでも無いのである程度割り切る必要があります。
最初に興味を持った土地先行物件は
最初にオヤッと興味を持った土地先行物件はこんなものです。
・立地:王子神谷駅/東十条駅から徒歩3~7分程度
・RC新築、5階建て、エレベーター無し
・利回り:6.5%
・値段:2.2億円程度
・土地:80㎡程度
・部屋:全9室で全部屋20㎡以上の1K
かなり限定的な情報になってしまいますが、北区ではありますが、この立地でRC新築で利回り6.5%というのは中々お目にかかれない物件です。
通常であれば利回りは4%台が良いところでしょう。
ただお気づきの方もいると思いますが、懸念点もありました。
それは(値段に対しての)土地の狭さと5階建てでエレベータ無し、という点です。
新築RC物件としては破格の利回りはありますが、土地値があまり出ない事と、果たして5階建てのエレベーター無し物件で客付けが決まるのか?
普通に私だったら4階や5階まで毎回階段で登るのちょっと嫌だなぁ、、、と思ってしまいます。
しかも措定賃料設定も特に割安では無く、まぁ相場通りかむしろ少し強気な設定に見えました。
設定されている想定賃料が適正かどうかに関しては、HOME’SやSUUMO等で同条件で賃貸募集が出ている物件を見てみたり、物件周辺エリアの不動産屋数社に電話して聞いてみるのが有効です。これは新築だろうが、築古だろうが必ず実施すべき作業です。
結局、物件価格が2億越えで多少客付けに不安がある事や、土地値が十分でない事を懸念してこの物件は決めきれずに見送ってしまいました。
まぁRCの新築の場合はどうしても上物の価値が大きくなってしまうので、土地値がある程度出ている物件を探すのはほぼ不可能とも言えますのでその辺は割り切る必要もあります。
ちなみにこの物件は路線価が30万/㎡程度でしたので、仮の実勢値を計算してみると精々4,000∼4,500万円程度なので(容積率を加味しても5,000万円くらいが限界か?)、売値に対しての土地値は20~25%程度しか出ていません。
例えばこれが120㎡以上くらいあって、3階建てとかの物件だったら完全に即決できるんですけどね、、そんな美味い話は中々ありません。
結局この物件は見送りましたが、そこからは土地先行物件に目を光らせながら物件探しに精を出し始める私でした。
~続く~