今日は不動産投資を行うにあたって、法人化は必要なのかどうか?という点をお話していこうと思います。
ちなみに私は1棟目を土地先行物件という土地から新築物件を建てる方法で始めましたが、法人化をしました。
法人化に関しては結論から言いますと、現在の年収次第ですべきか、すべきでないか、を決断すべきです。
今回は暫定で下記の様な物件、条件で個人所有の場合と法人所有の場合、どちらが有利になるのかをシュミレーションしていきます。
■物件情報
取得価格:1億(土地6,000万+上物4,000万)
都内新築の木造3階建て
利回り:7% (空室影響込みの前提)
融資条件:9割融資、期間30年、金利1.8%
不動産所得:207万円
※不動産所得計算(ざっくり)
家賃収入:700万円/年
諸経費 :-150万円/年
減価償却:-181万円/年
金利分: – 162万円/年
不動産所得額:207万円
■購入者
30台後半、既婚者、子供無し、年収1,000万円(課税所得額610万円の前提)
※課税所得計算方法
年収1,000万
‐195万 (給与所得控除)
-48万 (基礎控除)
-147万(社会保険料控除)
課税所得額:約610万円
個人所有の場合の税金込みのキャッシュフロー
まず下記の所得税の計算表をご覧ください。上記で計算した課税所得額は610万円でしたので、所得税税率は20%になります。
個人で不動産を取得しますと、不動産収入が本業のサラリーマンの課税所得額に上積みされて税金が計算されます。
つまり本業のサラリーマンの課税所得(610万円)+不動産所得(207万円)となりますので、合計817万円となり、依然900万円以下に収まっておりますので、不動産収入分(207万円)の所得税課税額は20%となります。つまり所得税額は41.1万円となります。
更に住民税が10%程度(自治体によって多少増減あり)発生しますので、住民税分で20.7万円です。
更には不動産所得が290万円を超えた場合は超えた金額に対して5%の個人事業税負担が発生するのですが今回は207万円なので未発生です。
税金の合計は。。。
所得税 41.1万 + 住民税 20.7万円 = 61.8万円 (207万円の収入に対して30%)となります。
なお、課税所得の計算に関しては家族構成や、各種控除等によって変わってきますので各自で計算してみてください。ネットに計算ツールは沢山あります(例 https://www.zeikin5.com/calc/)
ちなみにこのケースでは家賃収入700万に対して諸経費を150万で見積もっているので、経費率は21.4%になります。
新築なら修繕なんかはほぼ発生しないので、客付け費用、火災保険、固都税等含めてもこれくらいで収まるかな、といった感じではありますが、築古になっていくと修繕費用が上がっていき、もっと多めに経費率を見積る必要出てきます。
ちなみに個人事業として青色申告をしっかりすれば65万円の控除が受けられたり、配偶者や親族に手伝ってもらったりしている場合は支払う給与を青色事業専従者給与も経費として計上することが可能になるので、更に税金の額を減らす事も可能です。
ちなみに65万円の控除を含めると207万 – 65万 = 142万まで不動産収入が圧縮されるので、、、
税金支払いは、所得税 28.4万 + 住民税 14.2万円 = 42.6万円 (207万円の所得に対して21%)となります。
ちなみにこの不動産所得(207万)と実際のキャッシュフローは少し異なります。この不動産所得はあくまで税金計算の為の所得計算になりますので、実際のキャッシュフローはこんな感じです。
■実際の純キャッシュフロー
家賃収入:700万円/年
諸経費 :-150万円/年
元金返済分:-230万円/年
金利分: – 162万円/年
税金分:-42.6万円(青色申告時)
キャッシュフロー : 115万円
※元金と金利の返済は総額が毎年一定になる様に計算されますが、最初は金利分の比率が高く、段々元金の比率が上がっていく事になります。
実際はこの条件の物件だと、年間の手残りはこのくらいになります、思ったより少ないですよね、、、
利回り(空室込み)7%でもこのくらいになってしまうわけですので、、、利回り6%前半以下だとキャッシュフローは殆ど残らない、というのが分かると思います。
不動産所有の場合の税金込みのキャッシュフロー
では全く同じ条件の場合、法人を設立して法人に不動産を所有させた場合はいかがでしょうか?
ちなみに法人設立の場合は合同会社で全く問題ありません。合同会社であればFreee等の会社設立サービスを使えばほぼ無料(電子定款の発行を委託する場合は5,000円)で出来ますし、かかる費用は法人登録登記税の6万円くらいです。
細かく言うと会社印を作ったり、出資金の振込をしたり、法務局に法人印の登録申請に行ったり、、と結構細かい雑務が発生しますが、まぁ良い経験になると思います。
自分の会社を持つ、という事には私は一種の憧れみたいなものを抱いていましたので、結構テンション上がりました。 法人設立の目的の一つは正直そのワクワク感を感じる為だった、とも言えます。笑
では法人所有の場合のキャッシュフローの計算してみます。同じ条件なので不動産所得自体は207万円になります。
まず法人の場合の税率一覧になります。
■法人税率
区分 | 税率(※) | |
資本金1億円以下の普通法人等 | 年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.2% | |
適用除外事業者 | 19% | |
上記以外の法人 | 23.2% |
上記に追加で下記の税金も発生します。
- 法人事業税
● 年400万円以下の部分:3.5%
● 年400万円超800万円以下の部分:5.3%
● 年800万円超の部分:7.0%(※) - 法人住民税
● 法人税額の7% (※所得に対してでは無く、法人税額に対してです) - 地方住民税
● 法人税額の10.3% (※所得に対してでは無く、法人税額に対してです) - 都道府県民税
● 1千万以下の資本金の場合2万円
サラリーマンで不動産投資目的で法人する場合は特別な理由が無い限りは資本金1億以下で特に最初は収入は年800万以下になる事が殆どなのでその前提で計算します。
■不動産所得:207万円の場合の税金
法人税 (15%) :31.1万
法人事業税(3.5%):7.3万
法人住民税 : 2.2万
※法人税額(21.1万)の7%
地方住民税 :3.2万
※法人税額(21.1万)の10.3%
都道府県民税 : 2万
総計 :45.8万円
個人所有の場合 (青色申告無しで62万、有りで43万)と比べるとあれ、ほぼ一緒、、、?
但し、、、、ここには落とし穴もあります。法人で所有する場合、決算申告の為に税理士との顧問契約が必要になります。
この費用が大体20~30万円くらいかかります。(税理事務所や依頼業務によって多少変動します)
あれ、、、、つまり税理士費用を考えると税金と合わせて65万以上の費用負担となるので、個人保有で青色申告した場合の方が安く済みそうじゃん、、、、
おっと、結論を出すのは少しお待ちください、法人の力が発揮されるのはここからが本番です。法人は色々な制度等を利用して、不動産所得を限りなく低くコントロールできるのです。
まず、経費化出来る範囲が個人と大分違いますね、例えば家賃や車等を購入した場合、その他(あくまで不動産賃貸業務で使用する前提で)様々な費用が経費化出来るので法人税計算に使う、不動産所得額を更に圧縮できます。
更に従業員をという形態で家族に給与支払い(100万までなら所得税、住民税、社会保険発生無し、)出来ますし(これは個人事業でも可能ですが、認められる範囲が違います)、更に小規模企業共済という制度活用で年間84万円まで、経営セーフティ共済という制度で年間240万円まで経費として積立可能です。この辺の詳細興味ある方は下記書籍をお読みください。
つまり上記合計すると年間で420万円程度を更に経費化することが出来ますので、不動産所得の規模が今後大きくなっていっても、経費と上記の給与支払いや制度の利用で殆ど所得をゼロまで圧縮出来ますので、かなり節税が可能なのです。
不動産を法人所有すべき人はどんな人か?
ここまで解説したように、不動産の保有規模がそんなに大きく無い段階や、本業の年収がそこまで高く無い(1,000万未満など)場合は個人事業としての保有でもいいかもしれません。
ただ、将来的に規模を拡大させていき、例えば不動産(課税)所得で500万/年以上の規模を目指す方は不動産所得の圧縮余地が遥かに大きい法人所有の方が確実に節税が可能です。
また、本業+不動産所得で1,300万円を超えてくる様な方は、不動産所得の一部を所得税33%で計算する事になり、更に税額が上がりますので、法人所有の方が有利になるでしょう。
上記の様な方々は少し手間はかかりますが、法人化のメリットが確実に大きくなりますので、是非ご検討ください!
~紹介したお勧め書籍∼